櫻井翔太・処女作

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自己紹介

こんにちは。

この度、建築学生である櫻井は自分が設計したものが初めて実物、つまりS=1:1のスケールの「モノ」になりました。まだ学生である自分にとって、家具というスケールではあるけれども設計の機会を頂き、貴重な経験をさせてもらったので記事にしようと思います。授業で設計をやるよりも何倍も楽しく、また大変でもありました。

 

お施主さんは同級生。もうすぐ子供が生まれるから、ベビーベッドを作りたい!と実際に生まれる2週間前くらいに連絡が入りました。

 

現在大学院で設計の授業はとっておらず、設計欲が出ていたところに連絡が来たのでこれは大事な機会だから逃すまいと是非やらせてほしいと応答しました。といっても学校で設計しても細かいところまでデザインできないし、好きな建築の方向性がある程度固まってきてしまっているし、お客さんがいないからどうしても現代建築のファッションのレールの上に載せられてしまうのが嫌、というのが設計演習をとっていない理由なのですが。。まあ自分の建築への考えを記す機会ではないのでこの辺でやめておきます笑

もし気になる人がいらっしゃれば以下の卒業制作時に書いたしょうもない記事をご覧ください。

 

www.sakush0.com

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正直ここに書いたことで人を納得させることができないので、、つまりまだその程度の思想なのでじゃんじゃか批判してくださいね。

 

ということで僕の処女作を是非見てください。

はじめに完成し、部屋に収まった姿を、次に作る過程のことを記したいと思います。

それではどうぞ。

 

完成写真一覧

 

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1200mm×600mmのマットレスが収まるように。内法は1210mm×610mm。

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押入れとママのベッドの間に収まった姿。高さはママのベッドと同じに。そして赤ちゃんをベッドに載せてあげる時にお母さんが腰を痛めないように。

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もともとここにあった机が下に入るように。そしてコードが奥から通るように。

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これは実は結果的にうまくいったものですが、既製品の箱を取り付け可能な状態になりました。ママによると赤ちゃんがここから覗けて楽しい行為につながっているとか!

 

 

作業風景

それでは構想過程と作業中の風景をどうぞ。

基本的にモノを作る際は永く使えることが自分の中では一番大切なこと。

それはこれからもベースにしていきたいし、古いヴィンテージのものからインスパイアされている自分としてはそうとわかるデザインをしていきたい。

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何案かスタディして行き着いたこの形。

ただ希望通りの場所に収めるだけではなく、材料費もできるだけ少なくするスタディもできたのは本当にいい経験でした!

上の4枚のシートのみで買い出し、製作しました。

もっと具体的にできたかなとも思うけど、実は買い出しの前日は徹夜だったので許してね笑

 

1日では終わらず、夜になってしまった図。

暗いと作業もできないですからね。。

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一週間後、釘の打ち込みが弱いところがあって一旦解体してからまたみんなで作業。

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写真を見るとわかるように、釘の打つところとか全く計算していないんです、、

作る過程を考える時に打つ方向は考えていましたが、断面欠損の計算まではできていません。。。

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本当は側面は3枚横板が入るはずだったのですが、うまく収まらなくて、、

どうすればこのミスをチャンスに変えられるかを考えて間一枚を抜くことに。

すると先ほどの箱がかかるスペースができたのです!

まさに3年生の時に兼任講師をして来ていた先生のおっしゃるハンズオンアプローチというのを身をもって体験。

 

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ペンキを塗って完成!

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最後はみんなで裏に名前を書いてこれで終了。

 

写真とともに自分の考えを書くのはとても難しい。。と書きながら思ったので、この後に文章ばっかり書きます。読みたい方だけ読んでいってください。

 

 

建築、家具に対する思い

お客さんがいること

まず今まで建築を設計する授業と全く違う点がここ。そう、お客さんがいること。設計期間自体はとても短かったので打ち合わせも3回くらい。あとは写真をラインで送ったり、電話したりのみ。今回はとても少ない気はするけど、その一つ一つがとても大事で、信頼を積み重ねていかなければならない。今までは自分の思想や本を読んで影響を受けた形を選んで見たりでプロセスの筋が通っていて、問題解決をしていて、形が割と正しいようなものであれば評価される。でも特定のお客さんだけがいる場合、その希望を叶えることが全てだし、専門家としてその希望にさらに付加価値をつけることができれば本望。不特定多数の人間が使用する建物(例えば図書館や公民館、体育館、学校、、)を設計する場合は割と授業の課題に近い。なぜならお客さんは誰かわからないから。しかし住宅だけは違う。この家具製作の場合も。その中で社会、都市にどう対峙していくかが考えなければならないことではあるけど。

 

設計は自分だけでは成り立たない。今回は施主の機転のきいたアイデアも存分に入っている。だからこそ今までと違う楽しみを味わえたのかもしれない。何か作りたい。という気持ちが本当にあったから打ち合わせも楽しかった。もう少し自分が形へのアプローチを知っていたら、物を実際に作る経験を多くしていたらなど思ったりもするけど。

 

今回は設計料なんてものはもらっていない。資格もないし、デザイナーでもない。だから本当に純粋にモノを創りたいという気持ちが設計をする手を動かしてくれた。もし自分が建築家になれて建築設計を生業にしていたら、この時の気持ちは忘れずにいたい。もし忘れていたらこのブログに戻ってこよう。そのためのブログ運営でもある。

 

建築家は施主の考えだけを叶えればいいのか。という疑問を自分は持っている。これからいろんなクライアントを持っていく中で、一人の人間としての自分の価値観をどう活かすか、これはこれから存分に考えて行きたい。自分は社長の家に生まれたわけでもなく、お金持ちの家に生まれたわけでもない。お金持ちが持っているものは何か、自分の理解では資本はもちろん、文化資本であると思っている。その文化資本とはどんなに勉強しても基本的には追いつくことのできないもので、学校の勉強とは違う。いくら努力しても理解できない人には一生かかっても理解できない。解釈の仕方としては「価値観にはヒエラルキーがある。」というのがわかりやすいであろうか。価値観は多様でそれを認め合っていく必要がある。などというのは意味を持たない文言である。かといって低俗なものを蔑むことは良くなく、蔑んだ人こそ高貴ではなく、低俗なのである。

努力しても追いつかないといったが、自分は文化資本を獲得する努力をしている。その言葉の意味を理解して、たまたまビンテージやアンティークが好きになり、建築を専攻しているがために追いつけるのではないか、そして追い越し、それを自分の付加価値としよう。と考えているのだ。

 

ここで自分の建築家としての理想像を拙新論争というのを借りて描いておきたいと思う。拙新論争とは遠藤新と山本拙郎の建築論争のことで、まさにさっきの話に直結すると僕が感じているものだ。遠藤は施主の価値観をも覆すデザインをすることが建築家としての役割と言っている。それに対し、山本は遠藤の作る建築は施主の置きたいものが置けない、施主の希望を叶えてないではないか、というようなことを主張するのだ。つまり山本は施主に対し白い箱を提供し、あとは施主の好みの空間にして行けば良いという考えで、遠藤は家具、絨毯、カーテン全て建築家がデザインすることで初めて統一された空間性、場所性が仕上がる、つまり暮らし方、生活の提案だけで終わるのではなく建築家として持っている価値観に加えて、一人の人間としての価値観を施主に与えていくという考えだ。確かに価値観を覆すというのは僕も少し言い過ぎな気はするが、モノを作る以上、その人のデザインとわかるデザインこそプロであるはずだ。(隈研吾、草間彌生、SANNAなどを思い浮かべてもらうとわかりやすい)遠藤の場合、施主は遠藤の建築に対する思想に対し、深い理解を持って設計を依頼してくる。だからこそ価値観という言葉が遠藤の文章に現れてくるのだと思う。

 

さて初めの疑問に戻ろう。施主の希望のみを叶えればいいのか。

僕はそうは思わない、つまり遠藤新サイドの意見を持っている。

価値観が似通っている、もしくは多少好きなものが似ている施主ならばそれでいいかもしれない。しかし自分より価値観が下(価値観の上下関係については上に書きました。)の施主の場合、まず自分の思想を理解してもらう必要がある。では自分よりも価値観が上だと判断した場合どうするのか。。これはとても難しい。そのために建築家としてより多様な、多くの文化資本を所持している必要がある。と僕は思っている。ただの専門知識だけではお金持ちの施主を獲得することはできない。

なぜお金持ちの施主を獲得する必要があるのか。

次にそこに関して書いていきたい。

 

費用を減らすこと

今回のベビーベッドは施主が「ものを作ることが好き」「安く済ませたい」という想いのもと僕に設計を依頼してきた。

なのでコスト面ではかなり検討を重ねた。

 

バイト先の事務所でも費用をどこで下げるかの打ち合わせをよく耳にする。でも安くなるにつれてモノとしての質も下がっていく。木目が好きだから本当は仕上げは木がいいけど費用がかかるから木目調のクロスを貼りましょう、なんてことはたくさんあると思われる。

本当にそれでいいのか。いやよくない。

コストを言い訳にしていい物作りができないなんてそんな勿体無いことはない。

かと言ってお金がないならできません、なんてことは建築家として終わっているから、予算内で試行錯誤してベストのものを作ることが大事。

でもやっぱりお金があればやりたいことができるし、永く使われる建築を目指したいし、家具や道具だってそのはずだ。

そこに興味がない人のためにIKEAやニトリ、ハウスメーカーがある。物作りに創造性を働かせない人間にはなりたくない。理由は簡単である。人間が金も名誉も何もかも失った時に残るはクリエイティブな思考だけだから。でないとAIに仕事奪われちゃうしね!!

 

で何が言いたいのかというと、お金持ちの施主がいれば創造的な産物が生まれるし、永くこの世界に残るものが実現できる。

ベースはこれからもここにあるだろうけど、もっと知る必要のあることはたくさんあるから勉強していきたい。

 

施工を考えること

今回物作りに関してのど素人10人弱の力を結集させてベッド作りに励んだ。

みんなの協力なしにこのプロジェクトは成功していない。この場を借りて改めてみんなにありがとうと伝えたい。

もし専門の大工や棟梁がいればそちらにその仕事を任せるが、基本的に建築家も施工に対する理解は持っておかなければならない。ただかっこいいデザインを実現するというのが目的になってしまってはいけない。その実現をするために大工に相談するのは順番が違う気がする。大工は実際に施工する人たちだから物の作り方をよく知っている。

今は分業の世界だし、仕事を回していかないといけないから施工に関しては設計者は離れたところから見ているのが現代だが、デザインによって見え方はかなり変わってくるし、木の板の取り合いによって垂直性や水平性が変わってくる。そこを妥協してデザインするなど絶対にいやだし、やりきりたいと思う。

 

家具のスケールにしろ、建築のスケールにしろ、「どのように作っているのか」の視点は常に持って物を見ていかないといけないし、そこに対する解釈を持って自分のデザイン技術の源としたい。だからこのプロジェクトのおかげでより建築の見方、体験の仕方が変わってきている。研究者としての物の見方になってしまってはいけない。自分が生み出すためにその糧にする。これからはその視点を大事に写真に残し、自分のアーカイブとしていきたい。(もう家具アーカイブというフォルダを作成した笑)

 

今後について

初めてパソコン上の3Dが実物になった。先ほども言ったが、この経験を通して物の見方が変わった。アンティークやヴィンテージが好きということもあって、今後はもっと物をみてアーカイブを増やし、自分のデザインにつなげていきたい。

そのため、この2年間は設計料無料で(当たり前か笑)、実務の練習をしていきたい。

そのための営業方法や、完成品の見せ方、思想の伝え方などをもっと考えていかなければいけない。

実はベッドを作っているのを見た他の友達が棚を依頼してきた。

そう、すでに2作目に取り組んでいる。

またできたらここに記したいと思う。

 

 

最後に

言葉遣いが途中から変わってしまい申し訳ないです。笑

自分の意見を述べる時に敬語でなくなってしまうのはいけない癖ですね。。

そこまで時間もないので修正もしない僕ですが、、ごめんなさい。

 

ベッド依頼してくれた友達、ありがとう。

そして出産おめでとう。

 

みなさん!!無料で僕に物を創る機会を恵んでください!!

コメントでもFBでもInstaでもなんでも!送ってくれたら喜びます。笑