清澄寺祖師堂

内井昭蔵の傑作、照明は石井幹子

 

屋根荷重は、棟木から2本の束材とラチスを通しテンションリングの中央部に伝わる荷重と、直接テンションリングにかかる荷重とに分けられるが、それらはリングから柱頭の上部に見える3本の方杖を通し、2本の柱に荷重を伝達していく。

 

一方ボイドスラブにより自重を最低限に抑えたスラブは片持ちで、中央長手方向に大梁を設けることで、地震力を基礎、杭に伝達している。基礎は建物短手方向に末広がり形状とし、杭を2本並列させることで、XY軸共に地震力に抵抗している。

 

2本の柱はH剛が3本入った鉄骨鉄筋コンクリート構造で、帯筋がH剛それぞれ2/3本分に剪断力を伝達できるよう配筋されている。外型は三つ葉形状の平面だが、円を組み合わせたような意匠とすることで、一定の立面からは2本の円柱の組み合わせに見えるようにしているあたりがにくい。

 

また天井は格天井であるが、柱頭上部からでている鋼材方杖がパネル中央に抜けているあたり、設計時に仕上げと構造を行き来し、密度の高い検討がされていることが伺える。さらに言うとそこの穴の形状も4つの弧が組み合わさったようになっており、統率がとれているといえる。

 

何よりこの建物の魅力は屋根を2本の柱でもって支えている事実(実際は間柱的に外周部に鋼材はいるのだが)を、壁面を黒くした上で建物全体の重厚感を持たせたまま、近くから見て初めて視線が抜けることに気付かされる軒下のガラスカーテンウォールの執拗なまでのインビジブルなディテールで明かしていることにあろう。日本建築の軒下が暗いのは屋根が迫り出しているからだが、屋根を迫り出させ暗くて見えないところを透過させて構造を語るなど、そうできまい。

 

他にも触れたいことはたくさんだが、とりあえず。

 

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