進来廉による邸宅。
インテリアスタイリストの竹内くんにお供して現ギャラリーとして引き継がれている空間を味わう。
RC壁式構造とし、構造体の「間」にサッシュを納める。木製雨戸の幅を壁面と合わせることでファサードの日本的な「間」プロポーションを実現。1.5寸から2寸ほどの緩い屋根勾配と抑えることで建物全体の見えがかりを控えめにするとともに屋根の躯体厚を主張しないような立面の工夫。
桁材、面戸部分はガラスで浮遊感を演出。建具はフルハイトでなく、長押の水平線を1本入れることでやはり「間」を取っている。日本的に見えながらも、構造の手掛かりを消すディテールは素晴らしい。大江宏に似たところがある。
雨戸を閉めると、茶と白の連続した立面となりどこかグラフィカルな要素が味わえると想像できる。モダンな考えである。
平面と屋根伏計画も面白い。切妻の棟で空間を仕切らず、半間分ほど壁の位置をずらした上で、棟梁H型鋼を現しとする。ここを鉄骨にしたところが空間を全体的に軽やかにしている玄人らしい一手なんだろう。
造形的な観点や素材についてはみんなが触れるだろうし、最も設計者が参考にすべきはそこでなく、骨格、そこに引かれた基準線だろう。物の調和やスタイリングの妙もいいかもしれないがそことは別の視点から建物スケールを肌に染み込ませたいものである。
また悔しい空間を見てしまった。