定着度

器の世界では、所謂道具、というスケールにおいては、用途に適したカタチが人間の手に馴染むカタチでもあることが評価軸の一つにある。

 

手に取ったとき、見た目の素材や形から我々に訴えかけてくる重み、バランスなどがしっくりきた際に「手取りが良い」と表現するようだ。

 

ところで建築で、僕が好んで設計に取り入れたり、空間を見た時に落ち着きや安心感をもたらす一つの方法として、目地(凹凸に関わらず)を整えたり、建築部位(床壁天井)の入隅へ気を配ったりする方法がある。

 

外装や内装に囚われず、この手法を何故実践するか、商材を選定する際のモジュールや特注の際に整える性能を担保した上での寸法になぜ執拗に拘るのか。

 

これは空間において、「定着度の高い」「安定感のある」「安心感がある」「落ち着きの良い」「整頓されている」「座りの良い」という印象に繋がることであると、最近言葉が自分の中に集まっている。

 

これが先に記述した、「手取りの良い」状態に近づくためには、素材自身が持つ質量感を各建築部位においてバランス良く整えていかねばならぬのだと思う。質量感を整えるとは、重量を視覚的に感じる際の厚み、奥行き、陰影を整えることに繋がっていると思っている。

 

日本建築の真壁作りは柱という鉛直材と、長押、差鴨居などの水平材が目に見えている。構造体が目に見えていることで、建物が物理的に成立していることを無意識のうちに感じることができる。自然物だけで構成されている日本建築はもともと質量感の均整が取れていた。ただ、線が多いだけの空間がジャパンスタイルではない。

 

ある質量感が心地よく適度に落ち着いてくれる空間、僕が追いかける存在はそのような実践であり、その上に個性を見出さねばならない。そのためには日本建築への深い理解が必要であり、その深い理解の元、各方面で活躍された方の実践を見に行く機会は逃すべきではない。

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